ブログ blog

バイオマスについて思うこと

せっかくですので、バイオマスについてレッツが念頭に置いていることを書いてみようと思います。

まず、現行のバイオマスエネルギーについて。

みなさんバイオマスと聞いて一番初めに思いつくのは「バイオマス発電」だと思います

実際に新聞やテレビといった各種メディアにおいても、ほとんど毎日と言っていいほど電力についての話題が取り上げられております。

「日本には森林がたくさんあるんだから、これを使って電気を作ったらいいじゃん!」というのがバイオマス発電の根本的な考え方です。

この考え方は、半分正しくて、半分誤っているというのが、私たちの出した回答です。

正しいところ

「日本には森林がたくさんある」

誤っているところ

「日本には森林がたくさんある」

そうです。

日本にはたくさんの森林があるという事実は、正しくて誤っているのです。

我々は中部圏に拠点を置いておりますが、地域によるとはいえ、周囲を見てみると実際に森はたくさんあります。

これ、実は世界的にみると本当に珍しいことで、海外から来た人々は日本の森林を見て感動することが非常に多いのです。

(日本の森林率は、先進国においてフィンランド、スウェーデンに次ぐ第3位)

話を戻します。

森林は有限です。太陽光とは根本的に違います。

再生可能エネルギーとして同じ枠組みで話をされることが多いのですが、使い方を間違うと本来の「エコなエネルギー」という目的とは真逆に進んでいってしまいます。

たくさんあるからこそ、大事にしなければいけない。無駄にしてはいけない。

それは物流や加工であったり、エネルギー効率や熱交換の問題といった、部分的なところでも不要なロスを出してはいけないと思うのです。

つまり、「森林はたくさんあっても、使い方を考えないといけない」ということ。

たくさんあるからといって、大量に消費してよいということではないですよね。

現場で資源を調達してくれる方がいて、木を配送してくれる方がいて、エネルギーとなって私たちのもとに届く。

そういった過程をどこまで想像できるか。それこそがバイオマスを取り扱う上で、最も大切にしなければいけない考えだと私たちは思っています。

例え一人でさえ、嫌な思いをしてはいけない。レッツの「三方善」という理念は、こういう発想から来ています。

しかし現実問題として、バイオマス発電はこの事態を抱えています。

昨年3月に放送されたNHKのクローズアップ現代でも話題となりましたが、バイオマス発電所が乱立することにより、林業の需要は莫大に増えました。

が、需要が増えすぎたことにより、現場の調達が間に合っていないのです。その結果としてチップが集まりにくくなっており、ともすれば高額の補助金を利用して立てたバイオマス発電所が存続運営できないという恐れも出てきています。

これは本当に私たちが求めていた「再生可能エネルギー」だったのかな、と悲しくなります。

森林だけでなく、目の前に見えているものの背景を想像して、大切に利用していきたいと私たちは思っています。

どれだけの森林をどう使うのが一番良いのか。私たちは、今日もそんなことを考えています。

発電主流の環境ビジネスについて

先日、とある環境関連の展示会にオブザーバーとして参加してきました。

新エネルギーが中心の展示会ということもあって、再生可能エネルギーや環境関連のブースが盛りだくさんでした。

もちろんバイオマス関連の企業もたくさん出展されており、個人的にはワクワクして参加させて頂いた次第です。

率直な感想は、全体的に「発電」という言葉がとにかく多いなあと。

電気エネルギーは現代社会において、非常に重要だということは当然私も理解しているつもりではいますが、それにしてもちょっと発電を主体にしすぎじゃない?という感想。

何から何まで、最終的に電力へと変換させなければならないのでしょうか?

結局はFIT(固定価格買取制度)ありきで、太陽光発電がビジネスとして成り立ってしまった風潮のまま、企業が次の投資先を探しているという気がしてなりません。

(もちろん熱や動力としての利用を真剣に考えていらっしゃる企業もたくさんいらっしゃいましたが)

作った電気をどうするか、本当にエネルギーとして無駄がないか、といったエネルギーとしての本質は全く考慮されていないような気がしてなりません。

これからの環境ビジネスの根本は、電気を中心として動く今の社会に疑問を持つことが大切なのではないかと思うことがあります。

もちろん私自身も電気がなければ生きていくことはできませんし、このように文章を書くことすらできませんので、結局はバランスが大事ということしかできないのですが。

エネルギーミックスについて、身近なところから見直していく必要があるのかもしれません。

バイオマス利活用セミナー

「木質バイオマスエネルギー利活用セミナー」という勉強会に参加させて頂きました。 要約すると、木質バイオマスの現状を知ろうというセミナーです。

 

講演を簡単に分類すると、
①木質バイオマスの最新動向について
②三重県多気町の新規ORC事業について
③林業家から見る未利用木材の集荷・販売取組み
という3つの項目において、各方面での専門家の方が講演して下さるという内容でした。

 

3名の方全ての講演において共通していたのは、「数年後の燃料の安定調達まで、ちゃんと考えていますか?」という話だったように思います。

 

バイオマスがFITありきで始まってしまったのは既知の事実ですが、今回はその全てが20年間ちゃんと稼働するのかどうかという議論。物流についてあまりにもおざなりすぎるという結論でした。 普段から現場で我々が感じていることを、簡潔に伝えて下さったように思います。
また、講演の中では、熱を有効利用することが最も必要であるということも解説されていました。ちゃんと先を見越してバイオマスに取り組んでいらっしゃる方もいるんだと、少し感動しました。

 

つまり総括すると、全体的にかなり中身の濃いセミナーでした。行って良かったと思います。こういうものには積極的に参加していきたい。

 

余談ですが、バイオマス関係の用語って、専門の略字が多すぎる気がします(PKSとかORCとか)。
ある程度バイオマスについて知識がないと、聞いてる側は何言ってるか絶対分からないと思う。(いや、私のことなんですが)
もしこの記事を見ていらっしゃるバイオマス関係の方がいるのであれば、極力専門用語を使わないように気を付けて頂けると、きっと聞き手も理解しやすいと思いますよ。
ぜひともよろしくお願いします。
(専門略字の一覧表を更新しながら)

チップ原料と持続性

本日の主題「チップって、本当に継続して集まるの?」

仕事柄様々なバイオマス関連の施設を見せて頂く機会があるのですが、その都度我慢できず事業者の方々に上記の質問をしてしまいます。

再生可能エネルギーという大義名分があるとはいえ、結局ビジネスとしてやっているわけなので、そもそも燃料が集まらなかったら仕事として存続していくことはできません。

石油で言うならば、中東やアメリカから原油が流れてこないのと一緒ですからね。

先の震災からも分かるように、燃料の流通が止まるというのは、企業や経済にとって死活問題になりえる事だとも言えます。

 

では、話を戻して。

チップが本当に集まるだろうかという質問に対し、バイオマスの施設で働く方々のほとんどは口を揃えて「現状のところは」とおっしゃいます。(発電施設に関しては、100%です)

それはどうしてか。

流通のシステム(ハンドリング)が常に上手く稼働するとは限らないからです。

たとえば、伐採について視点を絞るとします。

当然ではありますが、山というのは下から上へと上っていきます。当たり前ですね。

つまり、森林の伐採についても里山から山頂へと徐々に切り開いていくという形になります。

伐採の初めは、大きな道路沿いの森林を整備していくわけですので、重機の乗り入れも容易にでき、わりかし順調に木材を切り開いていくことが出来るわけです。

が、しばらくすると、そうはいきません。車や重機が入っていけなくなります。いわゆる「山」の中へと侵入していくわけです。

そんな状況だからと言って諦めるわけにも行きませんので、林業家の方々は「林道」と呼ばれる林業用の道を山の中へと作っていきます。

これが非常に大変。正直大変なんて言葉もおこがましいくらいですが、本当に苛酷な作業です。1日で30m作業が進むかどうかというところ。つまり、道を切り開きながら伐採作業も行っていかなければいけないため、どんどんと作業効率も落ちていくわけです。

そのあたりの現場事情は、伐採をする上で絶対に避けては通れないポイントですので、山頂に近づいていくにつれ作業が進まない→丸太の伐採量も必然的に減る→チップが集まりにくくなる。という結論に至るわけです。

そんな状況を知っているからこそ、バイオマス施設の方々は「現状のところは」と回答をするのです。至極当然ですよね。

背景や裏側を知ることは、非常に大切です。

だからこそ、裏に潜んでいる事実を想像して進めていく必要性を感じます。

 

「物が動く」ってそんなに簡単なことじゃないよ、という話。

森林の循環

森林は使わないと意味がない。

当初、私がこの業務を始めたばかりの頃の話。この言葉が何を意味するのか、全く理解が出来なかった。

それは「森林というものは環境の要であって、温暖化にも大変重要な役割を持っている」という、何の疑問を持つことなくそういうものなのだと義務教育の中で教えられた知識があったから。

だからこそ、木を切ることは悪であり、大切にしていかなくてはいけないものだと感じていた。

と、自分の中にそんな前提があったからこそ、社長が何を言っているのか全く理解が出来なかったし、正直なところ逆に「環境破壊だ」くらいに思っていた。

そんな疑心暗鬼な状態から始まったこのバイオマス事業であったのだけれど、今ではすっかり「森林を定期的にアウトプットできる理想的な方法」を考えている。

一度、森林の整備業務を行っている方に依頼をして、岐阜県高山市の山林を見せて頂いたことがある。

林道の中を車で入っていくのだが(確か三菱のアウトランダー)、とても道なんて呼べたものではないほどガタガタで、そのあたりの絶叫マシンよりよっぽど縦横無尽に揺れた。

(高山の林道)

そんな状態で森林間伐の様子を見たことで、現在のバイオマス発電用木材需要と現場の供給量に圧倒的な乖離があることを確信した。

やはりもっと小規模でやっていく必要があると。

古くなった森林をエネルギーとして使うというのは、本当に素晴らしいことだと思う。

それがしっかりと将来性を持って運転できれば。

結局、何事もバランスが大切だということ。